マネジメント

決算書を読んでみる(14)千葉県内の病院ベンチマーク 財務諸表 財務分析

決算書を読んでみる(14)千葉県内の病院ベンチマーク 財務諸表 財務分析

総務省 病院事業決算状況・病院経営分析比較表より

今回は今までに取り上げた千葉県内の病院の損益計算書のデータを100床当たりの数字に換算してベンチマークしてみたいと思います。

経常利益(以下すべて100床あたり)

経常利益は多くの病院で赤字となっています。ただ、公的病院については、別会計負担金などの’補充’の多寡により赤字か黒字かが大きく変わってきてしまいますので、黒字の方が望ましいですが、黒字だからといってこれだけ見て単純に良いといえるわけではありません。

医業収益

100床当たりの医業収益です。

100床当たりだと、少ない病床数で高度な医療を提供している救急医療センターでかなり高くなっています。船橋市立医療センターや千葉県がんセンターも高く、意外なところでは千葉県こども病院も高くなっています。小児病床はそれだけで加算がつくことによるのかもしれません。

その他の医業収益と医業外収益

その他の医業収益と医業外収益です。この中に別会計負担金(県や市町村からの会計の資金注入)が入っています。仕分けのしかたが違うのか、千葉県救急医療センターだけその他の医業収益が高くなっています。正確に判断するには内容を確認する必要がありそうです。仮に別会計負担金相当と見なして、その他の医業外収益と医業外収益の加算をベンチマークすると上記の様になっています。病床が少なく資金投入が大きいところが高くなります。


職員給与費と委託費

人件費的な項目である職員給与費と委託費です。委託費は隠れ人件費と言われることがあります。昇級することは無いにしても、消費税がかかるので、委託費は本当に委託費で処理するべきか、内製化するべきか、そもそもそんなに必要か、検討すべき事項が多分に紛れています。

医業収益と人件費的な項目

医業収益と人件費的な項目についてまとめました。背景のエリアチャートが人件費的項目で、棒グラフが医業収益です。ほとんどの病院で人件費的項目だけで医業収益を超えてしまっています。比較的健闘しているのが君津中央病院と船橋市立医療センターです。
費用としてはこれに加え、固定費的なところでは減価償却費が、変動費的なところで医療材料費がかかってくるので、自立した経営は困難になっています。
人件費を安くするために独法化した方が良いのではないかという意見もありますが、そうすると別会計負担金が注入出来なくなり、卵が先か鶏が先かの議論が繰り返される事になります。

減価償却費

100床あたりの減価償却費です。
性質上、高度医療を提供していないところや、病院がふるいところでは小さくなります。
移転したばかりの松戸市立総合医療センターはやはり高くなっています。
がんセンターは移転前のデータなので、移転後どうなっているのかは注視が必要です。
海浜病院は移転を控えているにもかかわらず既に減価償却費が高いですが、この先大丈夫なのでしょうか。

材料費

最後に変動費として材料費を見ていきたいと思います。
分子標的療法などのがん治療薬の価格高騰を背景に、がん診療を行なっている医療機関では材料費も高くなっています。このほか、循環器疾患も材料費が高く、疾患構成により材料費は大分変わってきます。こども病院は意外にも材料費が高くなっていますが、同じく小児の診療比率の高い海浜病院ではそれほど材料費が高くなっていない、など、やはり疾患構成を合わせて見ていく必要がありそうです。
そのためには、DPCデータを見ていく必要があります。
ということで、今度は財務分析からDPCデータの分析に移っていきたいと思います。
過去の記事