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DPCのオープンデータ(DPC評価分科会データ)を使って医療機関別の診断群分類の割合を見える化 医療マーケティング

DPCのオープンデータ(DPC評価分科会データ)を使って医療機関別の診断群分類の割合を見える化 医療マーケティング

決算書を読んできたDPC医療機関+αのDPCオープンデータを利用して、各病院がどのような疾患を入院で診ているか見える化してみる。

決算書のベンチマークについてはこちら

決算書を読んでみる(14)千葉県内の病院ベンチマーク 財務諸表 財務分析 – EUZEnホームページ (euzen8.com)

使用するデータはDPC評価分科会の公表データを用いている。

「令和元年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について」

多くのファイルに分かれており、すべてダウンロードするのは手間なので、pythonを使うダウンロード方法の記事を以前出している。

DPC評価分科会のデータをダウンロードするのが大変なのでPythonを使ってウェブスクレイピングしてみた。BeautifulSoup – EUZEnホームページ (euzen8.com)

そもそもDPCとは

そもそもDPCとはDiagnosis Procedure Combination(診断と手技の組み合わせ)のことを言い、このDPCをもとに一日あたりの入院医療費を支払う制度をDPC/PDPS(Per Diem Payment System)という。

疾患と手技の組み合わせごとにコードが振られ、そのコードごとに及び入院期間長さに応じて一日あたりの支払い額が決まっている。実は診療実績や診療体制により、この点数に医療機関別係数がかかり、同じことをやっていても支払額が変わってくる。

DPCデータの分類

DPCデータのDiagnosis(診断)の部分はMDC(診断群分類:Major Diagnosis category)ごとに18種類に分けられている。↓図

大体頭から下に辿っていくようにつけられているとおもうと多少は覚えやすい。

各医療機関のDMCの比率を見ることにより、それぞれの医療機関が、どんな分野の入院診療を実施しているか見える化することができる。

これまで取り上げた医療機関のMDC比率

これまで財務分析で取り上げてきた医療機関+αのMDC比率を見ていきたい。

医療機関ごとに、かなりMDC比率に違いがあるのが見て取れる。

地域の中核病院

地域の中核病院は多少の構成の差はあっても、幅広く見ていることが分かる。

旭中央病院、船橋市立医療センター、松戸市立総合医療センター、千葉大学病院、君津中央病院、亀田総合病院などがこれに当たるだろう

がんセンター

がんセンターではがんの多い疾患、例えば呼吸器(MDC04)、消化器(MDC06)、乳房(MDC09)泌尿生殖器(MDC11)、女性生殖器(MDC12)、血液疾患(MDC13)などの割合が多くなっており、一方循環器(MDC05)は少なくなっている。

救急医療センター

救急医療センターでは、急変して救急車で来院することの多い疾患が多くなっている。具体的には脳卒中に代表される神経疾患(MDC01)、心筋梗塞などの循環器疾患(MDC05)、外傷など(MDC16)の割合が高い、循環器病センターも外傷こそ少ないものの、神経疾患や循環器疾患が多く、救急医療を担っていることが見て取れる。

2次救急病院

2次救急病院では、普段は外来で診療してきた高齢者が突然具合が悪くなった時に活躍する病院で、超高齢社会の中では最も需要が大きい。高齢者に多い、高度な治療までは要さない脳梗塞などの神経疾患(MDC01)、誤嚥性肺炎などの肺疾患(MDC04)、心不全などの心疾患(MDC05)、胃腸炎や腸閉塞などの消化器疾患(MDC06)、尿路感染などの泌尿器疾患(MDC11)、転倒による大腿骨頸部骨折などの筋骨格疾患(MDC07)や外傷(MDC16)などが中心とした構成になる。

構成からみると海浜病院や青葉病院が当てはまるだろう。

 

こども病院

こども病院はその名の通り小児疾患(MDC14)の割合が多い。こども病院以外でも、小児に特に力を入れている病院が、松戸市立総合医療センターや海浜病院であることが見て取れる。

リハビリテーション病院

リハビリテーション病院も特徴的な疾患構成となっている。

特にリハビリが必要な神経疾患(MDC01)、筋骨格疾患(MDC07)、外傷(MDC16)がほとんどの施設内のシェアを占めていることが分かる。全国には病院名でこそリハビリテーション病院という名を冠していなくても、実質的にリハビリテーション機能を果たしている病院も多い。

おわりに

以上、DPCのオープンデータを用いて、MDC比率を見える化することによって各病院の機能について、ざっくりとわかることを示した。

全国のデータが公表されているので、自分の住んでいる各地域のデータを見える化してみると面白いし、いざ病気になったときに、その領域の病気ならどこへ行くのがよさそうかについても示唆を得ることができるだろう。

もちろん、病院経営にとっては、競合があるのかないのか、自院や近隣の病院の強みは何か、マーケティングするにも非常に役立つデータとなる。