Youtubeにコメント

メンタリストDaigo炎上案件に際して人間の社会性と生産性について考えたこと

メンタリストDaigo炎上案件に際して人間の社会性と生産性について考えたこと

少し前にメンタリストDaigoという、心理学等の論文をもとに、人生の問題解決や生産性向上に関してコメントする人が、YouTube上でホームレスについて誤った理解で言及したために炎上してしまいました。

このことに関連して、人間の社会性や生産性について思うところがあったので述べてみます。

社会性と生産性の関係

社会性と生産性について、並べて語らせていただきましたが、この二つは密接に関係していると考えられます。

太古の昔、例えば狩猟をしていた時代は、全員が一日中歩き回って獲物を探し、獲物が見つかったら総力で狩りに行くという生活でした。自らの時間はもっぱら狩猟に費やされ、この時代では身体的に障害を負った者を支えて生活していく事もままならい時代であったと思われます。生産性について言うならば、年齢や性差による役割分担で効率を高めていたことはあっても、それ以上の厳密な役割分担はなかったものと思われます。

農耕が始まり、食料が蓄えられる様になると、定住ができる様になります。作物など交換価値を持ったものが生産できる様になります。狩猟時代限定的であったと思われる役割分担という者が加速します。この役割分担は、生産性を高める最も重要な手段の一つです。役割分担により、生産性が向上し、暮らしに余暇や余裕が生まれてきます。

狩猟などはオオカミが群れで協力して狩りをする様に、ヒトも原始的な社会性を持って活動はしていたと思われますが、農耕の発達や、その他産業の革命に伴ってさらなる役割分担の推進により、より発展的な協力が出来る様になり、生産性が向上します。生産性が向上することにより、余暇が生まれ、芸術などが発達したり、集団の中での弱者を養う余裕が生まれます。こうして、社会性を向上させてきました。

生産性を高める目的は?

社会性と生産性の関係について、前段で説明しましたが、そもそも生産性を高める目的は何でしょうか?

生産性を向上させるというのは、より少ない資源投入で同じだけの成果を生んだり、同じ資源投入量でより大きな成果を生むということであるわけです。

で、くりかえしになりますが、その生産性を向上させる目的は何でしょうか?

ある人は、より多くの収益を上げるためだ、と答えるかもしれません。それでは、もう一つ深掘りして、より多くの収益を上げるのは一体何のためでしょうか?

私が思うに、生産性を高める究極的な目的は、「余裕を生む」ためだと思います。

「余裕を生む」のこの余裕というのは、余暇に使うための時間的な余裕であり、また、様々な制約により生産性高く活動が困難な人を支援したり養ったりするための余裕でもあるでしょう。こうした支援や養護といったものが人間が高度な社会性を持っているという一つの証左であると考えています。

今回、Daigoの件は、たまたまホームレスについて言及されていましたが、ホームレス以外にも、介護が必要な方であったり、難病を抱えて生活している方だったり、社会的弱者は様々います。社会的弱者を排除する様なことは、人間の社会性を否定しているようなものであり、生産性向上を語る者としてはその本来的な目的を失っている状態の様に思います。

すなわち、生産性が低い人も包摂するために生産性を高めてきたのに、生産性が高くないからという理由で排除してしまうのは本末転倒であるように思うのです。

社会的要因 今の自分(彼)があるのは自分(彼)に由るものか?

そもそも、社会的な立場は本人だけで決まる物ではなく、社会環境や経済的な要因が大きく関わってきます。

たとえば、大きな観点で言うと、ジャレド・ダイアモンド著の書籍「銃・病原菌・鉄」の中で、人類の発展や民族間の争いの勝敗は、自然環境要因で説明できることが書かれています。
銃・病原菌・鉄

他の良く知られた例では、より小さな観点ではありますが、東京大学入学者の平均年収を見ると、6割以上で950万円以上となっており、経済力と学力には相関関係がある事が言われています。幼少期学童期に置かれた環境が影響して、高い学歴を得ることが出来ている、という部分が存在している事を示唆しています。

また、健康についても、健康の社会的な決定要因(SDH:Social Determinants of Health)が近年注目されており、国レベルでもジニ係数が高い(=経済格差が大きい)ほど、主観的健康観が悪い人の割合が高いことや、個人レベルで見ても、低所得者層の方が喫煙率が高い、肉や野菜摂取率が低いなど、不健康な行動の割合が高く、生活習慣病の罹患も多いことがわかっています。(健康格差について関心がある方はこちらをご覧下さいJAGESプロジェクト

今の自分があるのは、置かれた環境の要因が少なからず影響した上で成り立っているものであるということを自覚することは、偏った見方にならないためには重要なことであると思っています。

おわりに

私も病院経営支援を行なっているという仕事がら、生産性を高めるために活動をしていますが、その目的を明確にもった上で活動していきたいものです。

 

・・・・・・それにしても、陽極まって陰に転ず、易経の考えかたは大事だなとおもいました。(今度四書五経のうちの易経についてすこしまとめようかと思っています)