マネジメント

財務分析入門 収益性 安全性 生産性 成長性

財務分析入門 収益性 安全性 生産性 成長性

財務分析をする時に押さえておきたい基本事項をまとめます。

損益計算書(PL)で見る指標と貸借対照表(BS:バランスシート)でみる指標と二つにまたがっている指標があります。

収益性の分析

売上高総利益率(粗利益率・粗利率)

売上高に対して、総利益売上高から売上原価を差し引いた利益)が100分比でどのぐらいに当たるかを示したものです。

医療の場合は売上高医業収益で表現されます。

医療の中で売上高総利益率は粗利率という言葉を使う方が多いかもしれません。

売上高営業利益率⇒医業利益率

売上高営業利益率とは、売上高から売上原価と販売費及び一般管理費を差し引いた営業利益売上高に対する割合をいいます。

医療においては医業利益率といわれ医業収益に対する利益の割合となります。

売上高経常利益率⇒医業収益計上利益率

売上高経常利益率とは、売上高に対する経常利益の割合を言い、企業の収益性を計る尺度です。 経常利益は企業本来の営業活動から得た営業利益に、財務活動における損益を加味したものであるため、この比率が高い場合、資産の売却損益などを除いた通常の経営活動における企業の収益力が高いと考えることができます。

医療においては医業収益経常利益率となります。

自己資産当期純利益率(ROA)

ROA(Return on Assetの略称)とは、企業の総資本に対してどれだけの利益(リターン)が生み出されているかを示す経営指標で、主に、資本効率と収益性の内部分析や株式投資家が活用する指標になります。

負債・資本合計に対する利益率となります。

自己資本当期純利益率(ROE)

ROE(Return on Equityの略称)とは、 純資産の部合計から新株予約権と非支配株主持分を除いた自己資本を「元手」として、1年間でどれだけの利益をあげたかを見る企業の経営効率を測定する指標の一つです。

医療においては株式会社は参入出来ないので、資本金剰余金からなる資本合計に対する利益の割合となります。

総資産回転率

総資産回転率は、「総資産がどれだけ効率的に売上高を生み出したか」という資産運用効率を表す指標です。

一年間に売上によって総資本が何回入れ替わったかを表す指標で、売上高を総資本(総資産)で除した値です。

安全性の分析

流動比率

流動比率とは · 流動資産(現金預金、受取手形、売掛金、棚卸資産など基本的に1年以内に現金化される資産)と流動負債の比のことです。

流動比率が100%以上ないと、短期に払わなければならない金額(流動負債)より短期で使用できる金額が少ない事になり、資金ショートのリスクが高くなります。

200%以上あれば安全です。多すぎても、上手く現金を使えていない、投資に回せていないという可能性もあります。

当座比率

会社の財務状況把握のために用いられる指標のうち、安全性を示す指標として流動比率と当座比率があります。流動比率は流動負債に対する流動資産の割合、当座比率流動負債に対する当座資産の割合を表し、借入の返済に十分な資金が用意されているかの確認に用いられます。

当座資産とは流動資産の中でも現金預金、売掛金、受取手形、有価証券、未収金などのある程度すぐにお金に変えられる資産のことです。

流動資産のうち、すぐにお金に換えられることが確約されない在庫などを排して安全性を確かめることが出来ます。

 

負債比率

負債比率とは、財務分析の指標の中で、中長期的な安全性を測るときに使う指標です。負債比率は、自己資本に対する他人資本(負債)の割合を示しています。

計算式は 負債比率(%) = 負債 ÷ 自己資本 × 100

中長期の安全性を見る時は自己資本比率を使う事の方が多いですが、自己資本の何倍程度レバレッジをかけて運営されているか、という観点で見方の切り口を変えることが出来ると思います。

固定比率

固定比率とは、自己資本に対して固定資産がどの程度あるかという安全性(支払能力)を示す指標です。自己資本と固定資産を比較することによって、その時点の会社の長期的な支払能力を分析することができます。

固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100 で計算されます。

固定資産は借方(BSの左側)、自己資本は貸方(BSの右側)なのでそのバランスの程度を見る事になります。

固定資産は「決算日から1年以内に回収が予定されていない資産」を指し、土地や建物、設備機械、無形固定資産などが該当します。短期的に現金化できる「流動資産」とは違ってすぐには回収できないため、返済義務のない自己資本または、長期的に返済する固定負債で資金調達することが望ましいです。

貸方である自己資本が大きい方が安全性は高いので、すなわち固定比率は100%以下が望ましく、これによって「長期的な支払能力がある」と判断できます。

しかし、計算の上では負債を無視しているため、100%を多少超える場合は固定比率に関連する指標の流動比率や次の固定長期適合率を加味するべきであることや、実際に金額で中身を見ないと安全性がわからないというデメリットがあります。

固定長期適合率

固定長期適合率とは、自己資本固定負債の合計額に対して、固定資産がどのぐらいの割合になっているかを示す数値です。 固定比率に固定負債を考慮して勘案したものとなります。会社の収益を生み出す固定資産が安定した資金で賄えているかどうかを表し、財務状況の把握に用いられます。

固定長期適合率(%)=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100 で計算されます。

固定長期適合率は低い方が好ましく、高い場合は改善に努める必要があります。ただし、性質上、自己資本比率や負債比率も合わせて見る必要があります。自己資本が少なく固定負債が多い場合でも固定長期適合率は低くなります。

自己資本比率

自己資本比率とは、返済不要の自己資本が全体の資本調達の何%を占めるかを示す数値であり、自己資本比率が小さいほど、他人資本の影響を受けやすい不安定な会社経営を行っていることになり、会社の独立性に不安が生じます。 自己資本比率が高いほど経営は安定し、倒産しにくい会社となります。

生産性の分析

労働分配率

付加価値に占める人件費の割合を表す「労働分配率」は、人件費が適正な水準かどうかを判断するために使われる経営指標です。

人件費は従業員への投資であり企業が成長するためには増やすべきですが、コストという側面もあるため、増やし過ぎて経営を圧迫すると企業成長の阻害要因になりかねません。

日々の事業活動を通じて企業が生み出す付加価値は、人件費や企業の内部留保、賃貸料や税金の支払いなど、さまざまな要素に振り分けられます。このうち人件費に付加価値をどれだけ分配したのかを表す指標が「労働分配率」です。

労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100

付加価値額(控除法)=売上高 ー 売上原価

付加価値額(加算法)=営業利益 + 人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課

労働生産性

労働生産性とは、「従業員1人当たり、または1時間当たりに生み出す成果」を表した指標です。 そもそも「生産性」とは、投入資源と産出の比率を意味し、「投入した資源に対して産出が大きいほど生産性が高い」ということになります。 つまり、労働生産性とは「労働の成果(付加価値額)」を「労働量(従業員数)」で割ったものとなります。

労働生産性 = 付加価値額 ÷ 従業員数

資本生産性

資本生産性」とは、保有している機械や設備、土地等の資本がどれだけ効率的に成果を生み出したかを定量的に数値化したものであり、設備の利用頻度や稼働率向上、効率改善に向けた努力等によって向上すると考えられます。

資本生産性=付加価値÷資本(円)

設備資本生産性=付加価値÷(有形固定資産-建設仮勘定)

 

成長性の分析

売上高成長率(増収率)

企業の売上高の伸びのこと。

売上高成長率=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高となります。

企業の成長性や規模の拡大ペースを分析する際などに用いられます。

 

経常利益成長率(増益率)

企業が本業を含めて普段行っている継続的な活動から得られる利益のことです。 当期末と前期末の経常利益を比較して、どれだけ増加しているのかを見ます。 経常利益は、営業利益に本業以外の活動から得られた収益を加え、本業以外の活動にかかったコストを差し引いて計算されます。

経常利益成長率=(当期経常利益額 – 前期経常利益額)÷前期経常利益額(※)×100

※分母の前期経常利益額は、絶対値(常に正の数)で計算します。

 

総資本成長率

総資本増加率とは、総資本金額が前期と比べてどれだけ増加しているかを示す指標となります。 計算式では、当期の総資本から前期の総資本を差し引いて、それを前期の総資本で割ったものが総資本増加率となります。

組織の経済規模がどれだけ大きくなったかを見る指標です。

総資本増加率=(当期総資本 – 前期総資本)÷前期総資本×100

 

おわりに

以上、財務分析入門として収益性、安全性、生産性、成長性の指標についてそれぞれ見てきました。これらの指標をもとに管理会計をしていくと自分たちがどういった資本を元手に、何処にどれだけお金を使って、どの程度のお金を回して経営しているのか、資源配分状況を把握することができると思います。

前の記事

決算書を読んでみる(12)松戸市立総合医療センター 財務諸表 財務分析 – EUZEnホームページ (euzen8.com)