新型コロナウイルス

中小企業でもできる社内での新型コロナウイルス感染の対応の要点

本記事では

  • 中小企業に勤めるが新型コロナウイルス対策をどうしたらよいだろうか?
  • 行政のHPは情報量が多すぎて何から手を付ければいいのだろうか?
  • 最低限やっておかなければならないことはなんだろうか?

こういった疑問にお答えいたします。
本記事を読んでいただくことにより、新型コロナ対策として社内で優先的に取り組むべき事項がわかる様になります。
今回の記事は感染者が出ても影響を小さくとどめる事を主眼に置いています。
執筆者の私は、日本医師会認定産業医としての勤務経験が4年間あり、千葉県県医師会・千葉県合同新型コロナウイルス初期診療マニュアルの編纂委員も務めさせていただきました。シンプルにまず準備するべき事項をまとめさせていただきます。

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社内での新型コロナウイルス感染の対応の要点

企業にとって新型コロナウイルス対策の究極的な目的は?

企業にとって、新型コロナウイルス対策を講じる究極的な目的は一体何でしょうか?回答としては、事業継続性を保つ、ということに尽きると思います。いわゆるBCP(Business Continuing Plan)をいかに構築するか、という観点で取り組んで間違いはありません。(BCPについてはこちら

なぜならば、基本的に企業の目的は業務を通じての価値の創造であり、そこに重点を置いて対策をすることがもっとも優先されるべきだからです。またこれは、職員への配慮をすることと矛盾する事ではありません。

事業継続性を保つ、その視点で、自社には何が足りていないのか、どのような対策を講じる必要があるのか考えて行けば、優先順位が高いのは何か見えてきます。

新型コロナ対策にまず準備すべき事は?

新型コロナウイルス感染症の流行に際して、恐れる事態、事業継続が出来なくなってしまう事態というのはどういう状況があるでしょうか?
これを考えれば、逆に優先的に対策しなければならないことがわかります。

社内で感染者・濃厚接触者が続出して、出勤出来る社員がいなくなってしまう、非常に少ない社員で仕事を回さざるを得なくなる

やはり第1に怖いのは感染者や濃厚接触者が出てしまい、仕事が回らなくなる事です。ただでさえ感染者や濃厚接触者が出勤出来なくなり、大変なのに、保健所への対応など、追加的な業務負荷も発生する事になります。これに対しての対策は更にいくつかに分解する事が出来ます。すなわち、感染症対策そのもの、最優先業務の決定、柔軟な業務体制の整備などが挙げられます。

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感染症対策

やはり手指や職場の環境回りの消毒、マスク着用の徹底、会食、共食を控えることなど、基本的な対策を行なうことは重要です。もし感染者が出たとしても、双方がマスクをしており、至近距離で長時間面することがなければ濃厚接触者とはならないため、感染者と同じ職場にいたとしても出勤停止になることを避けることができます。消毒のためのアルコールや0.05%次亜塩素酸ナトリウムを常備しておくことも重要です。

最優先業務の決定

会社の事業の中で、特に収益の柱となっている様な事業や行程はどのような部分か把握しておく事が重要です。もし感染者や濃厚接触者が出た場合最悪の場合でも、収益の柱となっている事業だけでも継続して、他の事業は一旦停止するなどあらかじめ取り決めておくことが重要となります。それが出来る様、日頃から業務の共有や標準化なども必要となります。

柔軟な業務体制の整備

柔軟な働き方が出来る様な体制を整備することも重要です。オフィスワークの場合は、出来る限りテレワークが可能となる様に、普段から教育訓練をしていく事が必要となります。濃厚接触者の場合、症状事態は基本無いので、テレワークが可能な環境ではそのまま戦力として働く事が出来ます。勤務時間をフレックス制にすることによって、移動による感染リスクを低減する事も出来ます。ある程度の人数のいる組織では、同一業務2チーム制にしてしまい、完全に勤務日を交代してしまうという方法もあります。職場の人間がどのような状況でも連絡が取り合え、重要事項等の通知が出来るように、Line,Teams,Slack等のコミュニケーションツールを活用して連絡網を作っておくことも重要でしょう。

取引先への対応が出来なくなってしまい、取引相手に迷惑をかけて以降取引ができなくなってしまう

企業にとって大きな痛手となるのが、取引先とのお付き合いが感染症の発生を切っ掛けに途切れてしまうことです。実際に感染者が出たときに、保健所対応や社内対応に追われて取引先に十分な情報提供が出来ず、また、依頼通りの納品やサービス提供が出来なかったがために、競合に乗り換えられてしまったというケースも生じ得ます。それに対し以下の様な対策が必要となります。

取引先への通知分の準備

感染者が発生し、対応により業務が遅延する可能性がある場合等の取引先への通知文などはあらかじめ用意しておくことが望ましいです。有事の際は簡単な文章でも準備の労力を割くことは負担になります。事前準備が重要です。通知する場合は特定の個人は同定されないような配慮をした上で行なう事が望ましいでしょう。

業務の外部委託先の開拓

また一部の業務は外部委託が出来る様にしておき、業務の請負は引き続き行ない、実際の業務は外部委託して、取引を奪われない様に準備しておくなども必要になる場合もあるでしょう。特に喫緊に必要となるような取引内容の場合には有効な手段となります。

風評被害を被る

取引先だけで無く周囲への風評被害も発生する可能性があります。風評被害を押さえるには下記のとおり平時からの取り組みも重要になってきます。

平時からの情報発信及び正確な情報発信

普段から社内の広報、ホームページなどを通じて情報発信をしておき、有事の際は、現在の状況や対応状況、粛々と対応しており大きな問題はないことなど客観的で正確な情報を発信することにより、大きな風評被害を小さく収めることが可能です。隠しておこうとすると逆に風評被害が大きくなる、というのが世の常です。職員、顧客、地域などへのリスクコミュニケーションが重要です。

誰に/何処に相談していいかわからない

有事になってから相談先を探す、情報を探すのでは適切な対応を取ることに苦慮します。

相談先を持っておく

どう対応すればいいか知っている人、一緒に対応してくれる人、相談先をあらかじめ持っておく、把握しておくことも重要です。

実際の有事の時の対応は、相談先さえ押さえておけば、相談にのって指示をしてくれる場合が多いものです。実際、保健所などからは逐次対応の指示があります。自治体も相談窓口を設けています。どういう問題を何処に相談したらよいか押さえておく、あるいは何処を観れば書いてあるか、マニュアル等の存在を把握しておく事も重要でしょう。より具体的事項や、今回省いている労務管理上のこと、支援に関することなどもマニュアルや厚労省等のホームページには情報提供があります。

以上、社内での新型コロナウイルス感染の対応の要点について説明しました。

実際の対応については、日本産業衛生学会、日本渡航医学会が出している「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」厚労省HPなども参考にしましょう。その情報を読むにもとっかかりが必要だろうという事で自分なりに重要だと思う事項を記載してみました。皆さんの会社の感染症対策の一助になれば幸甚です。